2008年07月24日

蒲田の隠れ家「まやんち」のピーチメルバ

土用の丑の日は蒲田あたりをウロウロしてました。
で、ウナギじゃなくて桃の季節限定メニューを食べることに。

7月中に桃のデザートを食べておかないと後悔しそうだったので。
というのは、桃を食べ損ねて凹んだ年がありまして…


向かったお店の名前は「まやんち」。
某マンションの2階にある、隠れ家的ティールーム兼ギャラリー。
女性店主Mayaさんお手製のお菓子がいただけます。

お得なアフタヌーンティーセットが人気のようです。

内装は建築家の旦那様のプロデュースによるものだとか。
すばらしいご夫婦ですねえ…

mayanchi-peach.jpg
桃のデザートといえばコレ、「ピーチメルバ」。

エスコフィエのレシピを踏まえているようです。
(※レシピは中公文庫BIBLIO「エスコフィエ自伝」に記載)

フランボワーズのソースに浸された桃のコンポート。
口に含むと酸味の中からジワッと桃の甘みが広がって、
それがさらにバニラアイスと溶けあって…

いいですねえ、季節のデザート。


ところでエスコフィエはモントルイユ産の桃の使用を薦めてますが、
実際にはどんな品種だったんでしょう?

あっちの桃ってあまり甘くない印象ですから、そこが謎ですね。



◆店舗情報
【お茶とお菓子 まやんち】
住所:東京都大田区蒲田5-43-7ロイヤルハイツ蒲田207号室
電話:03-6276-1667
営業時間11:30〜20:30(土日祝11:30〜18:30)
水曜及び8の付く日(8・18・28日)定休
http://homepage2.nifty.com/mayanchi/


☆せっかくなのでエスコフィエのレシピを公開しましょう。

「ペーシュ・メルバのこぼれ話」

 「ペーシュ・メルバ」がはじめてメニューに載ったのは、ちょうど「カールトン・ホテル」の開店のときであった。優雅なプリマドンナ、ネリー・メルバ[オーストラリア生まれのソプラノ歌手、1861〜1931年]は、1893年から1896年にかけて「サヴォイ・ホテル」に宿泊してコーヴェント・ガーデンで歌っていた。私が彼女に会ったのもその頃であった。
 彼女がワグナーの歌劇『ローエングリン』に出演の際に、特別なはからいで聞かせてもらったことがあった。私は彼女に賞賛の気持ちを伝え、本物の大オペラ歌手の声量豊かな歌に酔いしれたその夜の礼を述べるために、一つびっくりさせてやろうという気になった。この上演の翌日、メルバ夫人は数人の友人を夕食に誘った。この幸運を逃してはならない。
 私は『ローエングリン』の第一幕に登場した神話上の荘厳な白鳥を思い出して、次のようなデザートをタイミングよく供した。それは、象嵌した銀製のテリーヌ型の底にヴァニラアイスクリームを敷き、その上に桃を乗せたもので、これを堂々と翼を広げた氷細工の白鳥で両側から囲み、最後にシュクル・フィレ[糸状のあめ細工]でヴェールをかぶせたものであった。
 その効果は充分に意表をつき、メルバ夫人は私の配慮に感激した。この大オペラ歌手に最後に会ったのはパリの「オテル・リッツ」であったが、彼女は氷の白鳥を添えた有名な桃のデザートが出た夜のことをなつかしんでいた。
 私の創作の評判はあっという間に伝わり、決定的なものとなった。このデザートがはじめて世に現れたときから25年の歳月が流れたが、今日でもなお世界的な名声を保っている。ただ何度となく残念に思ったのは、本当の作り方があまりにも変えられてしまっていることである。「ペーシュ・メルバ」は、適当に熟した柔らかい桃とヴァニラアイスクリーム、それに砂糖入りのフランボワーズのピュレでできている。この原則に少しでも反することがあれば、このデザートのデリケートな味を損ねてしまう。人によっては、フランボワーズのピュレを苺やすぐりのペーストゼリーに勝手に変えてしまうことがあるが、これでは期待しただけの風味は得られない。もっとも期待はずれなのは、料理本の執筆者の無頓着さである。彼らはまじめに調べようともしないで本物の作り方を知っていると称し、何の分別もなくフランボワーズのピュレにアロールート[くずうこんのでんぷん]やペースト状の粉を混ぜることを薦めている。桃をクレーム・シャンティイー[ホイップクリーム]で飾るように提案する人もいる。いずれにしても、その結果たるや、ただペーシュ・メルバという名を残しているだけであって、食通の味覚を満足させるにはほど遠い。ペーシュ・メルバのもともとの作り方は、次のようである。

 「ペーシュ・メルバ」のオリジナルな作り方(6人分)
 適当に熟した柔らかい桃6個を選ぶ。このデザート用にはモントルイユ[パリの東郊外の町]の桃を推薦する。桃を沸騰した湯に2秒間つけ、すぐに穴杓子ですくいとり、氷水の中に入れる。皮をむき、大皿に乗せて軽く砂糖をふる。冷所に置いておく。
 これとは別に、クリーミィなヴァニラアイスクリーム1リットルと、新鮮なフランボワーズを目の細かい漉し器で漉して作ったピュレ250gを用意する。このピュレにグラニュー糖150gを加えて冷所に置いておく。
 銀製のタンバル皿の底にヴァニラアイスクリームを敷き、桃をきれいに並べ、フランボワーズのピュレで覆う。生アーモンドの季節ならば、好みで千切りにしたものを桃に乗せてもよいが、乾燥アーモンドを用いるのは厳禁である。
 適当に切りとった氷の塊の中にタンバル皿をはめ込み、桃の上にふわりとしたシュクル・フィレをヴェールのようにかぶせる。シュクル・フィレはなくてもよい。
 桃を沸騰した湯につけてただちに氷水の中に落とせば、長い時間桃の新鮮さを保つことができ、黒ずみも防げる。このことは大レストランのサーヴィスでは特に大切である。ただし、皮をむいた桃を翌日までもたせるには、テリーヌ型に入れて、沸騰させたシロップに浸しておく必要がある。

「エスコフィエ自伝 フランス料理の完成者」より
(A.エスコフィエ著・大木吉甫訳 中央公論新社 2005年)

エスコフィエ自伝 - フランス料理の完成者 (中公文庫BIBLIO) [文庫] / オーギュスト・エスコフィエ (著); 大木 吉甫 (翻訳); 中央公論新社 (刊)
posted by kan at 01:02| Comment(4) | TrackBack(0) | その他東京ごはん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あちらの桃はさほど甘くないの?
日本の桃の感覚だと、ラズベリーソースをかけちゃうと、せっかくの桃の味が抑えられちゃう気がするのよねぇ。
実際には桃の味を引き立ててくれるのかしら?
Posted by にっき at 2008年08月01日 14:05
いまはEUの時代ですから、
白桃を含めていろんな桃が出回ってると思います。
「扁平な桃」なんかも見たことがあります。
でも、僕の印象では小さめの黄桃が主流のように思います。
ちょっとかたくて水分の少ない、ネクタリン系のものとか。

日本の白桃は甘くて汁気たっぷりで、
そのまま生食がいちばん贅沢な気もしますね。

エスコフィエの作った実物を食べることはできませんので、
後はどんな桃だったか追跡調査して想像するしかないんですけど。
コンポートも昔はかなり甘く作ってたかもしれませんね。
Posted by kan at 2008年08月01日 22:25
ブログのほうにコメントありがとうございます!
ピーチメルバ、とってもおいしそうですね〜。
ぜひ、いただいてみたい!です。
ここしばらく「まやんち」さんには行けていないので、3週間の夏休み中にぜひ、お邪魔したいと思っています。「まやんち」さん、お店中に手作りお菓子のいいにおいがしてとっても幸せな気持ちになりますよね〜。
Posted by mikako at 2008年08月02日 13:06
スコーンが入ったガラス容器が並んでたりしますよね。

入口に着くまではあんな空間があるとはとても思えないので、
誰かと一緒に行くなら、ある程度仲良しでないと誘えないですね〜

Posted by kan at 2008年08月03日 00:01
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